Web制作基本スキルで副業をステップアップ:案件の質と幅を広げる方法
Web制作会社で基本的なHTML、CSS、デザインツール(PhotoshopやIllustrator)の操作を学んできたものの、「このスキルを副業にどう活かせばもっと収入を増やせるだろうか」「将来フリーランスになるためには、どのような案件に挑戦し、スキルを広げていけば良いのか」といった疑問や不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
現在の給与に満足していなかったり、自分のスキルが特定の分野に偏っていると感じたりする中で、副業を通じて収入を増やし、同時に市場価値を高めていきたいと考えることは自然なことです。しかし、具体的にどのような案件を狙えば良いのか、案件の獲得方法や、自分のスキルや実績をどのようにアピールすれば良いのか、といった具体的なノウハウが分からず、最初の一歩を踏み出せずにいるかもしれません。
この記事では、現在お持ちのWeb制作基本スキルを基盤として、副業で対応できる案件の「質」を高め、同時に「幅」を広げていくための具体的な戦略と実践ノウハウを解説します。単なる技術論ではなく、ビジネスの側面、案件獲得、自己ブランディングといった視点から、あなたの副業を次のステップに進めるための道筋を示します。
副業における「案件の質と幅」とは
まず、副業で収入を増やし、キャリアアップを目指す上で重要な「案件の質と幅」について整理します。
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案件の質:
- 単価が高い案件
- クライアントのビジネス成果への貢献度が高い案件
- 専門性が求められる難易度の高い案件
- 自身のスキルアップに繋がり、やりがいを感じられる案件
- 信頼できるクライアントとの継続的な取引
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案件の幅:
- Webサイト制作だけでなく、LP制作、バナー制作、メルマガデザイン/コーディング、WordPressサイトの部分改修やテーマカスタマイズ、簡単なJavaScript実装など、対応できる案件の種類が多いこと
- デザインのみ、コーディングのみ、といった範囲に限定されず、プロジェクト全体の一部または大部分を担当できること
副業で安定的に、そして効率的に収入を得ていくためには、単に数をこなすだけでなく、一件あたりの単価(質)を高めたり、様々な種類の案件(幅)に対応できるようになることが不可欠です。これにより、収入アップだけでなく、自身の市場価値向上や、飽きずに副業を続けられるといったメリットも生まれます。
基本スキルを活かして「案件の質を上げる」には
現在お持ちのHTML、CSS、デザインツールの基本スキルだけでも、案件の質を高めるアプローチは可能です。ここでは、単価アップやクライアントからの信頼獲得に繋がる視点について解説します。
クライアントの「課題」を解決する視点を持つ
単に指示されたデザインやコーディングを行うだけでなく、クライアントが「なぜ」そのWebサイトやバナーが必要なのか、その背景にあるビジネス上の課題や目的を理解しようと努めてください。
例えば、LP制作案件であれば、「なぜLPが必要なのか」「そのLPで最終的に何を達成したいのか(問い合わせを増やしたい、商品を販売したいなど)」をヒアリングで深く掘り下げます。そして、デザインやコーディングの提案時に、「このデザイン要素は〇〇という目的のために配置しています」「この構成にすることで、ユーザーが迷わず問い合わせまで到達できるように工夫しました」といったように、技術的な説明に加えて、クライアントのビジネス課題解決に繋がる理由を伝えるようにします。
このようなアプローチは、あなたが単なる「手を動かす人」ではなく、クライアントのビジネスパートナーとして、成果にコミットする姿勢があることを示し、信頼獲得に繋がります。結果として、継続案件や単価交渉の機会を得やすくなります。
自身の「強み」を明確にし、差別化する
Web制作の基本スキルを持つ人材は多数います。その中で、「あなたに頼みたい」と思ってもらうためには、自身の強みを明確にすることが重要です。
- デザインとコーディングの両方ができる: 納品データの引き継ぎがスムーズ、デザイン意図を理解したコーディングができる、といった強みになります。
- 特定のデザインテイストが得意: シンプル、ポップ、モダンなど、得意なデザインスタイルがあれば、それをアピールします。
- 特定の業種や分野に知見がある: 飲食業界、美容業界、SaaS企業など、過去の経験から特定の分野のWeb制作に詳しい場合、その専門性を強みとしてアピールできます。
自身の強みを活かせる案件を選ぶ、あるいは、強みを前面に出して提案することで、他のフリーランサーとの差別化を図ることができます。
基本スキルから「案件の幅を広げる」具体的なステップとスキル例
既存スキルを土台として、対応できる案件の種類を増やすことで、副業の機会を大きく広げることが可能です。ここでは、比較的学習コストが低く、副業案件で需要の高いスキルをいくつかご紹介します。
ステップ1:既存スキル+αの技術を習得する
HTML、CSS、デザインツールのスキルに加え、少し技術的な範囲を広げることで、対応できる案件の種類が大きく増えます。
- WordPressの基本カスタマイズ:
- 既存テーマのCSS調整、簡単なレイアウト変更
- プラグインの導入・設定
- カスタムフィールドの表示(Advanced Custom Fieldsなどの基本的な使い方)
- 多くの企業サイトやブログでWordPressが利用されており、テーマのカスタマイズや機能追加の需要は非常に高いです。PHPの専門知識がなくても、既存コードの読解力やCSSの知識があれば対応できる案件も多数あります。
- JavaScript/jQueryの基本:
- お問い合わせフォームのバリデーション
- ハンバーガーメニューの実装
- 簡単なアニメーションやカルーセル
- ウェブサイトに動きやインタラクションを加えるスキルは、ユーザー体験を向上させ、案件の付加価値を高めます。jQueryは比較的学習しやすく、既存サイトでの部分改修案件でよく求められます。
- Gitの基本操作:
- バージョン管理システムであるGitの基本的な使い方(commit, push, pullなど)。
- 複数人で作業する案件や、クライアントによっては必須のスキルとなります。クラウドソーシングなどの単発案件では必須ではない場合もありますが、少し規模の大きい案件や継続案件では求められることがあります。学習コストはそれほど高くありません。
これらのスキルは、既存のHTML、CSSの知識と密接に関わっており、比較的スムーズに習得を進めやすいでしょう。公式ドキュメント、オンライン学習プラットフォーム(Udemy, Courseraなど)、技術書籍などを活用して、手を動かしながら学ぶことが効果的です。
ステップ2:デザイン領域の幅を広げる
Webサイト全体だけでなく、部分的なデザインや周辺のデザイン案件にも対応できるようになることで、案件の選択肢が増えます。
- バナー広告、SNS投稿画像のデザイン:
- デザインツールのスキルを活かし、Webサイト以外の広告媒体やSNSに最適化されたデザインを作成します。
- Webサイトデザインとは異なる、視覚的なインパクトや訴求力が求められるスキルです。
- メールマガジンデザイン/コーディング:
- HTMLメールの作成(テーブルコーディングなど、独特のノウハウが必要な場合があります)や、デザインデータの作成。
- 企業のマーケティング活動に不可欠であり、継続的な案件に繋がりやすい分野です。
- 簡単なイラストや図解作成:
- デザインツールのスキルを活かし、Webサイトやバナーに使用する簡単なイラストや、サービス内容を分かりやすく説明する図解を作成します。
- 情報伝達の質を高め、デザインに独自性を加えることができます。
これらのデザイン領域のスキルは、Webサイトデザインで培った構成力や色彩感覚、ツール操作スキルを応用して習得できます。
ステップ3:ビジネス/実務領域のスキルを強化する
案件の質と幅を広げるためには、技術スキルだけでなく、クライアントワークを円滑に進めるためのビジネス/実務スキルも重要です。
- 効果的な提案書作成: クライアントの課題と、それに対するあなたの提案(デザイン、機能、構成など)がどのように課題解決に繋がるのかを論理的に説明する能力。
- 適切な見積もり作成と単価交渉: 自身のスキルと作業内容を正しく評価し、根拠に基づいた見積もりを提示する能力。スキルや対応範囲が広がったことを踏まえて、自信を持って単価交渉を行う能力。
- 契約と請求: 業務委託契約書の内容を確認し、自身の権利と義務を理解する。適切なタイミングで正確な請求書を作成し、送付する手続き。
- コミュニケーション能力: クライアントの要望を正確にヒアリングし、進捗状況を適切に報告し、問題が発生した際に冷静に対応する能力。
これらのスキルは、実際の副業案件を通じて経験を積みながら習得していくことが効果的です。失敗から学び、改善を重ねることで、クライアントからの信頼を高めることができます。
案件の質と幅を広げるための実践ノウハウ
スキルを広げただけでは、それが直接収入アップに繋がるとは限りません。広げたスキルをどのように「見せ」、どのように「案件に繋げるか」が重要です。
ポートフォリオで「対応できる幅」と「提供できる価値」を示す
ポートフォリオは、あなたがどのようなスキルを持ち、どのような案件に対応できるかをクライアントに示す最も重要なツールです。案件の質と幅を広げたら、ポートフォリオの内容もアップデートする必要があります。
- 対応できる案件の種類を明記: 「LP制作」「WordPressテーマカスタマイズ」「バナーデザイン」など、対応可能な業務範囲を明確にリストアップします。
- 広げたスキルを使った実績を掲載: WordPressカスタマイズ案件、JavaScriptを実装したサイト、バナーデザインの実績など、新しく対応可能になった案件タイプの実績を掲載します。もし実際のクライアント案件がない場合は、自主制作や知人からの依頼などで作成したダミーサイトやサンプルデザインでも構いません。その際、「どのような目的で、どのような技術を使い、どのような工夫をしたか」を具体的に記載します。
- 単なる成果物だけでなく、プロセスと結果を示す: 制作の背景にある課題、それに対するあなたの提案や工夫、そして可能であれば制作後の効果(例: LPからの問い合わせ率が〇%改善したなど、具体的な数字)を記載することで、あなたが単にデザインやコーディングができるだけでなく、クライアントのビジネスに貢献できることを示します。
ポートフォリオは一度作ったら終わりではなく、スキルや実績が増えるたびに更新し、常に最新の状態を保つことが重要です。
多様な案件獲得チャネルを活用する
特定のチャネルだけに依存せず、複数の方法で案件を探すことで、より多様な案件に出会う機会が増えます。
- クラウドソーシングサイト: ランサーズやクラウドワークスなど。プロフィールで対応可能なスキルと案件の種類(例: 「WordPressの簡単なカスタマイズも対応可能です」「JavaScriptを使った動きのあるサイト制作も承ります」)を明確に記載します。提案文では、単価の高い案件や新しいスキルを活かせる案件に積極的に応募し、自身のスキルや過去の実績をアピールします。
- SNSでの情報発信: Twitterなどで、学習している新しいスキルや、作成したポートフォリオの更新情報を発信します。同業者との交流や、直接案件の相談を受けるきっかけになることがあります。
- 知人・友人からの紹介: これまで副業で良い仕事をしてきたクライアントや知人から、新しい案件を紹介してもらうルートは非常に強力です。丁寧な仕事とコミュニケーションを心がけることで、信頼関係を築くことが重要です。
- エージェントサービスの活用: ウェブ制作系のフリーランス向けエージェントに登録すると、自身のスキルや希望に合った案件を紹介してもらえます。比較的単価の高い案件が見つかりやすい傾向があります。
単価交渉を適切に行う
対応できる案件の質と幅が広がったということは、提供できる価値が高まったということです。これに伴い、適切な単価交渉を行うことが重要になります。
- スキルアップしたことを伝える: 新しく習得したスキルや対応できるようになった案件の種類をクライアントに伝えます。
- 提供価値に基づいた根拠を示す: 「WordPressのカスタマイズに対応できるようになったことで、クライアント様側で簡単にサイト更新が可能になります」「JavaScriptを使ったアニメーションで、ユーザーの離脱率低下に貢献します」といったように、新しいスキルによってクライアントにどのようなメリットを提供できるかを具体的に説明します。
- 市場相場を把握する: 同様のスキルや経験を持つフリーランサーが、どのような単価で仕事を受けているのかを調査します。
単価交渉は難しく感じるかもしれませんが、あなたが提供できる価値に見合った報酬を得ることは、モチベーション維持や副業の継続にとって非常に重要です。
副業を継続・拡大するための学習と実践
副業で案件の質と幅を広げ続けるためには、継続的な学習と実践が欠かせません。
- 常に新しい情報に触れる: Web制作やデザイントレンド、新しい技術に関する情報をキャッチアップする習慣をつけます。RSSリーダー、ニュースレター、技術系ブログ、SNSなどを活用します。
- 学習目標を立てる: 「次の3ヶ月でWordPressのカスタムテーマ開発の基礎を学ぶ」「今期中にJavaScriptでのアニメーション実装をマスターする」など、具体的な学習目標を設定します。
- インプットとアウトプットを繰り返す: 書籍や教材で学んだ知識を、実際に手を動かして試したり、簡単なものから実装してみたりすることが重要です。自主制作や、知人の簡単な依頼などで練習機会を作るのも良いでしょう。
- 自己投資を惜しまない: 質の高い有料教材、役立つツール、カンファレンス参加など、自身のスキルアップに繋がるものへの投資を検討します。
副業を行う上で知っておくべき実務知識
副業を継続していく上で、技術や案件獲得のノウハウだけでなく、実務的な知識も必要になります。
- 時間管理: 本業と副業の時間を両立させるためには、効果的な時間管理が不可欠です。タスク管理ツール(Trello, Asanaなど)、カレンダーアプリなどを活用し、無理のないスケジュールを組みます。
- 税金と確定申告: 副業所得が年間20万円を超える場合、原則として確定申告が必要です。日々の収入と支出を記録し、必要な経費を把握しておくことが重要です。会計ソフトの導入も検討すると良いでしょう。
まとめ
この記事では、Web制作の基本スキルを持つ会社員の方が、副業で案件の質と幅を広げ、収入アップを目指すための具体的な戦略とステップについて解説しました。
既存のHTML、CSS、デザインツールのスキルは、副業を始める上での強力な基盤となります。これに加えて、クライアントのビジネス課題を理解する視点を持つこと、WordPressやJavaScriptといった+αの技術を習得すること、バナーやメルマガといったデザイン領域にも対応できるようになること、そして提案や交渉といったビジネススキルを磨くことによって、対応できる案件の種類は大きく広がり、一件あたりの単価を高めることも可能になります。
案件の質と幅を広げるためには、ポートフォリオを効果的に活用し、多様な案件獲得チャネルを試すことが重要です。そして何より、継続的な学習と実践を通じて、自身のスキルセットを常にアップデートしていく姿勢が求められます。
副業を成功させる道は一つではありません。ご自身の興味やキャリア目標に合わせて、どのようなスキルを広げ、どのような案件を狙っていくのか、この記事がその戦略を立てる一助となれば幸いです。焦らず、着実にステップを踏みながら、あなたの副業収入と市場価値を高めていってください。